総合内科専門医受験記録

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「小谷の蟻の問題」を解く

小谷の蟻の問題というのがある。
ja.wikipedia.org

要は1x1x2cmの直方体の角からアリが表面を歩いたときに、一番遠い場所はどこか?という問題だ。
これが点対称の角が答えでないから面白い。

これの解法をいくつか見たんだが、なんかピンと来ないので、座標ゴリ押しで解いた俺の解法を載せておく。
以下直方体は下のようにA~Hを定義し、アリはAにいるものとする。

■なぜGが最も遠い場所でないのか
答えの点が面EFGHのどこかにあるのは自明だろう。(側面のある点と仮定するならその直上の辺EFGHと交わる点が更に遠いので矛盾)
このとき、最短距離の候補が2種類有る点がキモである。
具体的に言えば、下図において左と右で長さが違うということだ。

図の三角が点Gにある場合は左ではAG=√10、右ではAG=√8となるため、点Gの場合、最短距離は右図のような長方形を2回通るパターンが最短となる。

この三角を点Xとしたときに、確かに左図においてはAXよりAGの方が長いだろう。だが、実際にはAGの最短距離は右図なのであって、右図においては一概にどっちが長いかは言えないのである。そしてこの場合、AXの最短距離は左図なのか、右図なのかを場合分けする必要もある。

■解法
大筋の骨格としては
1.ある点Xにおいて、最短距離の候補を列挙し、その中で最も最短な経路を選ぶ
2.各最短経路がとれる領域において、その長さが最も長くなるものを選ぶ。
とする。
点Aを原点として、展開図をXY座標に展開する。

上記展開図では正方形EFGHは辺EFで接しているが、当然展開する前はFG,GH,EHで接しており、それぞれがその最短経路を持つ。なのでその4パターンをすべて合成した画像が下記である。

面EFGH上に点EからF方向にa,H方向にb離れた点をXとする。(0≦a≦1, 0≦b≦1)

先程の図にXの点を図示すると、下記の4点が最短距離の候補となる。それぞれX1,X2,X3,X4(黒点)とし、Aとの距離をD1,D2,D3,D4(緑線)と置く。このとき、Xの座標は、
X1(-b,2+a),X2(a,2+b),X3(-1-a,3-b),X4(1+b,3-a)となる。

しかし、上の図は恣意的であり、AFとEHの交点をM,AHとEFの交点をNとしたときに、X4が⊿EFM内、X3が⊿HEN内(下図灰色)の場合は辺FGまたは辺GHと交差しないため、X4、またはX3、その両方が存在しない場合があることに留意する。

それを点Xの領域として図示すると下記の様になる。


それぞれ4点の最短距離は
D1^2 = (a+2)^2+b^2 = a^2+4a+b^2+4
D2^2= a^2+(b+2)^2 = a^2+b^2+4b+4
D3^2=(a+1)^2+(b-3)^2 = a^2+2a+b^2-6b+10
D4^2=(a-3)^2+(b+1)^2 = a^2-6a+b^2+2b+10であるので、その大小関係は

D1<D2 ⇔ 4a<4b ⇔ a<b
D1<D3 ⇔ 4a+4<2a-6b+10 ⇔ 6b<-2a+6 ⇔ b<-a/3+1
D1<D4 ⇔ 10a-6<2b ⇔ 5a-3<b
D2<D3 ⇔ 4b+4<2a-6b+10 ⇔ 10b<2a+6 ⇔ b<a/5+3/5
D2<D4 ⇔ 2b<6-6a ⇔ b<-3a+3
D3<D4 ⇔ 2a-6b<-6a+2b ⇔  a<b

となるため、例えばD1が最短距離となる条件はD1<D2かつD1<D3かつD1<D4を満たすa,bの領域である。D2~D4においても同様。
それを図示したものが下記。

よって点Xの場所によって4つの最短経路候補のうち最も短くなる経路が判明したので、その範囲の中で最も最大となる値を探す。
例えばD1^2はD1^2= (a+2)^2+b^2 の式から(a,b)=(-2,0)を中心とする円であることがわかる。点X1は上図ab座標平面の①の部分のみ動ける。よってその最大は図からa=3/4,b=3/4のときであることは明らか。
D2^2も(a,b)=(0,-2)を中心とする円であり、D2^2を最大化するa,bはa=3/4,b=3/4である。
D3^2は(a,b)=(-1,3)を中心とする円であり、D1,D2ほど自明ではないが、(a,b)=(1,1)と(-1,3)がなす直線は傾き-1であることからD3を大きくしていったときに(a,b)=(1,1)でb=aと接するので、これもa=3/4,b=3/4で最大化する。D4においてもD3と同様。

以上より、各最短経路において最大の値を取るのはいずれにおいてもa=3/4,b=3/4のときであり、その値は、D^2=(11/4)^2+(3/4)^2=130/16=65/8、D=√130/4の時である。

よって答えは、平面EFGHにおいて、点EからF方向に0.75進み、H方向に0.75進んだ点である。